進化と絶滅 生命はいかに誕生し多様化したか
日経サイエンス別冊235 2019年10月
進化と絶滅 生命はいかに誕生し多様化したか
渡辺 政隆 編
◎アマゾンの評価 ★4.5 (★5つ50%、★4つ50%)
・カスタマーレビュー:なし
◎私の評価 ★4 ほぼ最高評。
・レビュー
良い本である。読み応えがある。地球の歴史に興味のある人はぜひ読むといい。
最初の3章は地球の歴史に関わる記事で、4章は生物学の進化の仕組みに関わる記事である。
私の関心は、1章~3章である。
1章.生命の起源を探る
1章は、生命の誕生場所として「陸上の温泉地帯」を提案する。
また、花こう岩地帯やかんらん岩地帯に棲む「CRP細菌」の研究が紹介される。
従来から言われている「深海の熱水地帯説」は疑問視される。
2章.カンブリア爆発の謎
2章は、カンブリア爆発を考える。エディアカラ紀の海水環境を考える研究が興味深い。動物が炭酸カルシウムの骨格を形成するためには酸素濃度がある閾値を超える必要があり、エディアカラ紀の海では、約2000万年間隔で酸素濃度がその閾値を超えたという研究である。
この研究は、エディアカラ生物の生態、カンブリア爆発、原生代後期の全地球凍結など、いろいろなことを考える上で参考になる。
なにより、紹介される論文が2010年代後半の新しい視点を持つ論文で、私のような公共図書館の本にしか触れる機会のない者にとっては、非常に刺激的な本だ。
3章.大量絶滅を見直す
3章も面白いが、編集部が書いた「古生代末に何が起きたか」は本書で唯一残念な記事だ。
ペルム紀末の大量絶滅に関する記事だが、紹介する学説が古臭く、新鮮味がない。その証拠に参考文献は1998、2003、2009、2012年の日本一般書4冊だけである。
私の勝手な憶測だが、編集協力を依頼した「日本のトップ研究者」の学説を紹介する必要があったのだと思う。しかし、白亜紀の隕石衝突による恐竜絶滅説を提唱したアルバレスが火山爆発説に歩み寄ったという興味深い研究にも触れているので、そっちの研究を中心に紹介してほしかった。
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